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----自分が居るのは青の滲む世界

.




「え、何でわかったンすか」

御手洗が不思議そうに机の上のカードをめくる。

「簡単な話だ。 目を閉じて君の心音を聞いていた」

めくったカードはスペードの8。
先ほど自分が口にしたカードと同じものだ。
御手洗はまだ不思議そうな顔をしていた。
どうやら今の説明では足りなかったらしい。

「聴覚発達者の場合、目を閉じるという事はより鮮明に“視える”という事なのだよ」

生徒会室に御手洗を呼び出したのは他でもなく【任務を手伝ってもらうため】だったのだが、
超聴力者がどういったことを出来るのかと言う話になって現在に至る。
たかがカード当て。だがこのカード当ては少し違った。
ルールがいたってシンプルなのである。

「質問に正直に答える必要はない。 嘘をついてくれても構わない」

伝えたその時、御手洗の心音がわずかに大きくなったのが聞こえた。


*


自分は水の中が好きだ。
外のうるさい雑音は鈍って聞こえ、自分の血流の音と心音だけが聞こえる。
全ての生活音(ノイズ)から開放される場所。それが水の中なのだ。
考え事をしたいとき、自分はよく人の少ない時間帯にプールへと赴く。
もちろん水泳も好きだが、それ以上に何もせずただただ潜っているのが好きだ。
それに半無重力の状態が好きで、ついうとうとしておぼれた事も何回か忘れたがある。

水の中は音で私を縛らない。

先生のめんどくさそうな溜息も聞こえない
友達の与太話や陰口も聞こえない
親の近所への見栄も聞こえない
店員の押し殺した欠伸も聞こえない
赤の他人の押し込んだ苦情も聞こえない

青い世界でやっと自分は【普通】へと解放される。

だが、いつまでもその世界には居られない。
息が続かないのだ。人間だから当たり前であるのだが。

その世界は僅かに優しく包み込んだ後に、あちらに戻れと冷たく突き放す。
お前はその耳でやる事があるのだろう?と。

なんでこんなに聞こえてしまうんだろう
なんで人と違うんだろう
この力で何が出来るんだろう

いつもずっとそれの答えをまどろむ意識の中で考えていた


*


「――つまりだ。 人間は少なからず嘘をつくときに体に変化が起こる」

心拍数の変化や、癖、手の平の汗に足の揺れ、声の震え、唾の飲み込み回数、瞬きの回数に咳払いの仕方。
たとえ普通の感覚の人が見ても分からないような微塵の変化でも視覚の君と2人であればほぼ100%嘘を見破れるだろう、と付け足した。

「はぁ。 つまりは相手の言動を注意深く見ていろ、ってことっすね」

そうだと声は出さず、笑みと首の動きだけで返事をした。

「音と動作で徹底的に虚言を暴いて追い詰める。 そして本当の事を知るのが今回の任務だ」

あまり興味なさそうに返事をする御手洗を見て笑う。

「せっかくある力だ。 何かに役立てないと勿体無いじゃないか」

コレが正しいとかそういう難しいものかは分からないが、と言って席を立つ。
自分は【任務】をしているときだけは自分の力を受け入れることが出来ている気がする。
嫌悪していたこの力を何かに生かそうだなんて、思ってなかったから。

「さあ、行こうか」

二人が出た生徒会室のドアが静かに閉じられた。
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